プログラム概要

ヒューマンバイオロジーとは

自然環境と社会環境の中で人を理解し、持続的な地球の幸福へ貢献する

「ヒューマンバイオロジー」? Human Biology?、分かったようでよく分からないタイトルです。「人」と「ヒト」は、科学の世界では異なった使い方をします。生命という意味ではなく理不尽な、あるいは崇高な特性を持った社会の一員である「人」に対して、生物の一つの種として扱う時に用いるのが「ヒト」です。

ヒトの生物学
~体のしくみとホメオスタシス~

永田恭介/監訳

本書は、豊富な図表で分かりやすく「ヒトの生物学」を解説する入門書です。さまざまな学問領域の垣根を超えて、ヒトを宇宙や地球の一つの生命体として捉え、地球環境と生物進化の時間軸でヒトの体のしくみとホメオスタシスを理解する内容になっています。

ヒューマンバイオロジーは新しい概念を持った学問領域です。ヒトを他の生物と相対化して生物の一種であると考え、宇宙の中の地球に住み、生物学的進化の時間軸の中で生まれた種として把握し、その生命の恒常性維持と継承のメカニズムを、変遷する時の中で捉えようという学問です。

生物学の新たな分野であって、医学とは異なります。しかし、ヒューマンバイオロジーにとって、医学的な知識や概念は重要です。最近、大学に入学してくる生物学や医学の領域の学生は、高校や大学の教養課程の時に、真にその後の学問で役に立つ数理科学(数学、物理学、化学など)を学んでいないのではないでしょうか。

  • 疾患
  • 食糧問題
  • 汚染問題
  • 災害

ヒトの科学にとって、致命的な問題は、実験的に試すことができないということです。代替実験として動物を用いることは当然ですが、その結果はそのままヒトに適用できません。その例として、新薬の開発を考えてみてください。医学の領域で得られた知見と、動物や細胞を用いた生命科学研究から得られた結果を統合し、数理科学の考え方を導入し、さらにさまざまなパラメーターの変化を考慮して、新たなストレスや刺激の結露を最先端の計算科学を用いてシミュレーションすることができたら、すばらしいと思いませんか?

我々がめざすヒューマンバイオロジー学位プログラムでは、ウェットな実験とドライな論理と検証の協業によって、ヒトに起こる出来事を科学し、バーチャル空間にヒトを再現することで得られる理解と、その上に成りたつ新たな技術開発をめざしています。

科学は普遍性を証明する努力を続ける一方で、工学(技術)的に正しく表現されれば、それも1つの理論の証明であることを知っています。このことは、学問を探究する者も、学問で得られた知見を基盤に新たなテクノロジーを創生する者も同義であることを意味しています。未来を担う者は、アカデミックに科学を深化させる者であり、社会に技術として還元する者であり、また社会と科学と繋ぐ者でもあります。

我々がめざすヒューマンバイオロジー学位プログラムでは、これらの多様なキャリアを可能とする考え方とそれを学ぶためのコンテンツを設定しています。たとえば、それぞれに対応して、学ぶ者自身が問題を解決するために先達を世界に求める仕組み、アントレプレナーシップサブジェクトや適性技術サブジェクトなどの実体験、ディベートや各種の社会還元プランの創出プログラムなどです。

我々はめざすヒューマンバイオロジー学位プログラムを言い換えて、「船長プログラム」とも呼んでいます。大航海時代の船長も現代の漁師も、操船術などの「専門力」だけではなく、羅針盤やGPSからの情報はもとより、鍛えられた「目利き力」、「突破力」、「完結力」をもって、自らの責任は遂行しているのです。さあ、船出しましょう! 多様な背景や文化を持った同輩とともに、また世界を学ぶ場として。

ヒトの生物学
~体のしくみとホメオスタシス~

永田恭介/監訳

本書は、豊富な図表で分かりやすく「ヒトの生物学」を解説する入門書です。さまざまな学問領域の垣根を超えて、ヒトを宇宙や地球の一つの生命体として捉え、地球環境と生物進化の時間軸でヒトの体のしくみとホメオスタシスを理解する内容になっています。

  • 疾患
  • 食糧問題
  • 汚染問題
  • 災害

我々の目指すヒューマンバイオロジー研究

ここでは、一例として、ヒューマンバイオロジー研究としてのインフルエンザ感染症研究を示しています。

インフルエンザウイルスは、水鳥を自然宿主として、ヒトを含む他の動物種に感染した場合のみ、病気を引き起こします。しかし、マウスで高い病原性を示すウイルス株でも、ヒトでは病原性を示さない例も多く、免疫応答や生理機能の変化など、細胞や組織の感染応答を計算機上でモデル構築することで、ヒト個体におけるウイルスの病原性発現や適応進化を理解することが求められています。

これらを基盤情報とすることで、今後流行するウイルスを予測してワクチンを作成したり、耐性ウイルス株が出現しにくい抗ウイルス薬をin silicoで探索することも可能になります。