ヒューマンバイオロジー学位プログラムで育った学生に将来どういう人材になることを期待しているか?
我々のヒューマンバイオロジー学位プログラムで育った学生さん達は、この学問分野の中で地球規模の課題に関して、その解決に貢献できる人材となって欲しいと思っています。我々地球の中で、この分野で、この領域を今後引っ張っていく、そういう人材になっていただきたいと考えています。
5年間のカリキュラムはどのようになっているのか?
我々のカリキュラムは1年次2年次には座学を中心としたディシプリン型対応の教育を行います。一方で、2年の後半からは横断的なカリキュラムと、それを実践するプロセスを学ぶようなカリキュラムとなっており、研究は、その流れの中で、5年次まで続いていくというカリキュラムとなっています。
従来の大学院教育との違い
従来の大学院教育では、一度研究室に入るとその研究室だけで研究を行う、いわゆる「蛸壺」ですが、1つの分野に深く精通していくような学び方をします。我々が組み立てたこのプログラムでは、もちろん、深く一つの分野を突き詰めながら、大きく自分の分野に関係ある学問領域を採り入れて学んでいくような方策を考えています。実際、我々は最終的には、ヒトをスーパーコンピューターの中に創りだそうと考えているわけです。そのためには、医学や生物学のみならず数学や物理、あるいは計算科学といったものが協働して、研究と教育を行なっていかなければならないと考えています。
ヒューマンバイオロジーについて説明して欲しい
ヒューマンバイオロジー。新しい言葉ですが、欧米社会の中ではヒトが人らしく、進化の時間の中で、そして環境の中で生きていくための生理と病理を学ぶ学問だということになっています。我々はその概念をさらに一歩進めて、ヒト/人に関わる健康と生命の問題を、その中で解いていこうというふうに考えています。
グローバルリーダー(国際的に活躍する能力)の育成が1つの特徴となっているがどのように育成するのか?
グローバルリーダーを育てるにあたって、哲学だけではやはり育てることはできないので、具体的なカリキュラムの中に我々はグローバル人材育成の方法を取入れています。例えば、その中の1つは、「適性技術」というものの考え方を採り入れた授業です。これは自分の持っている科学や工学の知識と技術を、開発途上国の現場で役立てようという科目です。また、「国際研究室ローテーション」というのがありますが、これは先端の研究所あるいは企業の研究所に、自分の研究を推進するために、共同研究を行うために、出かけて行くようなプログラムになっています。
企業や産業界に通用する様な能力を育てるとあるがどのような方法か?
特に産業界に出て行くシミュレーションを行うような科目もあります。起業家マインド育成から、最終的には起業、「ベンチャーをたてる」ということですが、起業までのプロセスを習うような科目もあります。それに関わって、ビジネス論や法律論を学ぶような科目も用意されています。
プログラムの中に学生支援が充実しているとあるが具体的にはどのようなものがあるのか?
学生支援はたいへん大切なことだと考えています。まず第一に、国際的に海外から集まった学生たちが、日本の学生も含めて、一つの場所で生活できる「ドミトリー」という環境を整えました。二番目は、学業に専念できるように、経済支援を用意いたしました。この支援はサラリーとして、給与として支給されるもので、今までの奨学金とは考え方が違います。また、海外活動などにおける種々のリスクケアについても充分な準備を整えています。
全世界の受験生に向けてメッセージを
科学とテクノロジーは人類と地球に幸せをもたらしましたが、一方で解決しなければならない問題も生じさせています。我々のヒューマンバイオロジー学位プログラムには、これらの問題を、特に健康と生命の観点から(telop:健康と生命に関する地球規模課題を解決する)解決できる人材を育成しようと考えています。多くの学生さんたちの参加を強く希望しています。
パンフレットなどはありますか
「パンフレット・ポスター」のページからPDF形式にてダウンロードできます。
(1年生)/(2年生)とあるものは、HBPの学生が回答しています。記載のないものは教員が回答しています。
出願書類は全て英語との事だが、推薦書も英語で記載するのか
基本的には英語でお願いしています。
どんな思いで入学を決めたか。あるいは、進学に際し迷った点など。
(1年生)一番悩んだのは、5年というくくりにコミットできるか。また、筑波大学の他学部(フロンティア医科学)に合格していたため、その選択でも悩んだ。HBPに決めた決定打は、HBPが今までになく新しいプログラムなので、そこに飛び込む事で自分もこれまでにない人材に成長できるのではないかと思ったため。
他大学からの出願、または国籍によって不利な点があるか。
全くありません。日本中、世界中から学生に来てほしいと考えており、筑波大学の学生を優先することはありません。入試については、試験問題を見てわかるように国籍、出身大学で差がつくものではありません。このプログラムの成功は筑波大学のためにあるのではなく、グローバルリーダーを輩出する事である。このプログラムから本当に良い人材を輩出することが我々にとっての成功です。
(他大学の学生)自分は以前、生物学とは違う分野だったので、専門分野でずっと学んでいる学生に比べ生物学の知識が不足している。そのような場合に、試験の際にはどのレベルの生物学の知識が必要になるのか。
このプログラムは、様々なバックグラウンドの学生の入学を想定しています。ですから入試については、過去の出題を見て頂ければわかるとおり、知識力が問われるものではありません。みなさんの身の回りにある問題について、真面目に考察しているかどうかが問われるような問題です。
(1年生)入試については、(生物学の知識は)特に問題ないと思います。現在自分がとっている1年次の授業は病理学など医学系が中心なので知識が足りず大変なこともあるが、同級生にサポートしてもらったりしてカバーできると思います。
このプログラムでは修士の資格はとれますか
5年一貫制博士課程なので修士の資格は取れません。学生は5年のうち2年間で基礎的な事を学修し、2年終了時にQE1(Qualification Examination)という適性試験を受けることになります。それに合格してはじめて3年次以降に進級できる。そのような区切りはあるが、修士がとれるということではありません。
4月入学と10月入学ではカリキュラムや卒業の時期が異なるのか
卒業の時期は4月入学と10月入学で異なり、4月入学の方は5年後の3月、10月入学の方は10月となります。カリキュラムについても、入学時期の異なる学生が同時に学べるように設計されています。1年次については、4月入学の学生は1年次の後半と2年次の前半、10月入学の学生は入学後1年間に座学が集中しています。同じカリキュラムが学べるようになっているため心配はありません。
ラボローテーションについて教えてください
ラボローテーションは何通りかあるが、一年次、配属が決まる前に、4~5のラボを1週間程度周り、基礎的な事を学ぶというのが最初のラボローテーションです。1年次の後半に、実際に自分が行きたいところをもう少し絞りラボに行くものもあります。これは通常のカリキュラムを並行して行われるので、1年次の後半はかなり忙しくなります。
非常に忙しいプログラムとの話があるが、実際のところどうなのか
(2年生)1年生のときに30単位分の授業をとり、ラボでの研究も進め、また適正技術教育の授業と、この3つを両立させようとがんばってきた。ただ自分は万能ではないので、全部深く掘り下げられたわけではありません。自分の専門である感染症、バクテリアの分野はよく理解できるが、その他のコンピュータや数学分野は、1年生の初めは理解するのに苦労した。しかし2年生になり、分野の輪郭は把握できるようになった。研究はがんばっている。適正技術については、昨年度のSeed Contestで賞を頂くことが出来た。今月も東ティモールを訪問しホットシャワーを作るプロダクトを生み出すプロジェクトを進め、それを試す予定。これら3つをやるのは大変だがとても充実している。
計算科学、生物、医学、その他色々なカリキュラムがあるが、単位を取るのは大変ですか。それぞれの分野をどの程度深くやるのか。バックグラウンドが生物の人は生物を深く学ぶのは問題ないと思うが、計算科学をやってきたヒトが生物学をやるのは大変ではなかったか?
(2年生)私が所属していた筑波大学医療科学類では数学のの授業がなく、4年間のブランクがあったので、1年時における生物学のための数学は本当に大変でした。感覚としては、計算科学をやっている人が生物をやるほうが敷居は低いのかなと感じます。一番大事なことはどれだけ興味をもてるかだと思います。
このプログラムを卒業した方は具体的にどのような進路を取るのか。
(2年生)研究者志望。海外で将来研究したい。日本の研究も海外の研究も知ったうえで、どこが一番自分の研究に合っているか探したい。このプログラムは、5年間のうち合計3年間ぐらい海外に行く期間があるので、それを決める良い機会になると思った。それが志望した理由でもある。
(1年生)このプログラムで研究だけでなく色々な経験を積み、将来的には国や国際機関で働けたらと考えている。
(1年生)現時点ではなにも決めていないが、研究と教育に興味があるので、その共通項となるようなフィールドで働けたらと思っている。大学または企業どちらにいても実現できると思う。それを軸として、このプログラムで様々な経験をしてそれを見極めたいと思う。
一つは、研究者を育てるだけのプログラムではないので、企業や国際機関などで広い視野をもって働いてほしい、広い選択肢から選んでほしいという気持ちはあります。
(HBP学生へ)今現在の生活の課題や、大変なことはありますか。また将来はどのような道に進むのですか。
(2年生)他の修士の学生に比べると授業が多い。1年の3学期などはかなり大変であった。私は筑波大学の医療科学類出身で、今まで学習した分野と異なる授業については大変だったが、実際に授業を受け多彩な分野について学べてよかったと思う。進路については、このプログラムに入る前は研究者になることを考えていたが、これまで色々見えてなかったことが見えてきて、将来の進路について考えている。東ティモールに行く機会があり、日本では治療が可能で死ぬ必要のない病気で亡くなる人がいるという現状を目の当たりにし、今はまだ具体的ではないが、世界に対し何ができのかについて考え始めている。
研究者になろうと思う人が大半だと思うのですが、今の彼の話のように色々見聞きことで考え方・感じ方が変わる場合がある。このプログラムは研究者だけを求めるのではありません。アメリカなどでは、Ph.D. とMBAを持ちビジネスを展開する人もいます。ありきたりの研究だけでなくプラスアルファこのプログラムは求めています。 学生は当初狭い領域の中だけにいるが、視野が広がり、自分が何に適しているか、何をやりたいか考える機会がある。色々な進路があるし、道を拓くことができるのだと思います。それができるのがこのプログラムの特徴であると考えています。
(学生へ)HBPに入学して今どう感じているか
(1年生)私のバックグラウンドは臨床医学です。私がこのプログラムに入学した理由はコンピュータを用いた創薬の研究を行いたいと思ったからです。生命科学係でコンピュータを用いた複合領域の研究を行っている大学院の学部は非常に数が少なく、その点でHBPは非常に魅力的と思い進学を決めました。将来についてですが、私は実際に薬を患者さんに届けたいという目標があります。このプログラムはアステラスや島津製作所などの民間企業との接点が多くあり、医療の応用に関する企業の方の話を聞くことができたり実際に企業に行く機会がある。また企業家精神育成プログラムもあり、そのようなことも学べるというのは、他の大学院ではない。実際に医療を患者さんに応用するときに大学院で学ばなければならない事は多々ありますが、このプログラムではそれが学べます。
(1年生)僕のバックグラウンドは生物学で早くから研究が好きだったが、研究と言ってもいろいろな分野がある。学部の3年のときに海外に行った際、多様な分野の人が関わりディスカッションしてうまく仕事を分担しているのを見た。このプログラムで挑戦してみたかった事の一つは、このプログラムをうまく使えば、1つのアイデア、プロジェクトにこだわることなく、たくさんのアイデアを、国境や分野をこえて協調して進めること。経済的なサポートもあり、海外の学会に行くことも可能。ネットワークを広げることができるし、いろんな知見を広めることができる。一人の研究者がある分野で金字塔を立てるのもいいが、研究者がネットワークを組み、一人でできないことを色々な人と組みながらできたらよいと思う。この5年間でネットワークを広げるのが、研究者としてやっていく新たな戦略ではないかと考えている。このプログラムではそれがやりやすいと判断した。HBPでは、MITの人や化学の人とも接点があり、チームを組んで何かできないかと構想するのは楽しい。また先生との接点も多い。そのためとても恵まれているプログラムである。
(1年生)このプログラムに興味を持つ人たちの中で、希望がある人も不安がある人もいると思うが、自分が入学前に説明会に参加した時点では不安のほうが大きかった。かなり恵まれた環境が提供されるが、果たして自分がそんな最高の環境に見合う人間なのかどうか不安で悩んでいた。入学してみて、言いたいのは、頑張ればなんとかなるということ。入学直後のウェルカムパーティでは英語での先輩方の話を聞き取るのも大変だったが、1か月半程英語授業を受けて、自分の英語の聞き取りや会話能力も上がってきて、授業の理解度も上がってきた。自分が成長したいとか、この素晴らしいプログラムに加入して自分の可能性を高めていきたいという強いモチベーションがあることが大事。この説明会に参加している時点でそのような意識が高い方が多いと思うので、ぜひ挑戦して、出願書類の、志望動機を書く際に今の自分を見つめなおし、自分の意見をぶつけてみるのも手だと思います。