これまで扱ったことがないものだから
Qualifying Examination(QE)は既存の大学院にはない課程で、運営する私たちも立ち上げの時点では何をしなければいけないかわかっていませんでした。実際、QEに関する規定はプログラムが走り始めてから決めたものも多かったです。
プログラムを修了するために必要な審査であるQE2は、当初中間審査報告会や合宿型での研究発表という位置付けでしたが、これではQEとしては認められず、再協議となりました。同時期に、学修成果の進捗をアウトプットし、見える化する必要性が議論されていました。QE2審査における評価と学修成果の見える化に関する議論の結果生まれたのが、外部のノウハウを活用したGLidDでした。
さらに、QE2 ProposalにもQE2 Proposal用のGLidDを導入して良かったと思います。QE2 Proposal GLidDは、簡単に言うと、GLidDのノウハウであるエビデンスベースの客観的評価手法をQE2 Proposalの評価に応用したものです。これは、教員によるQE2 Proposalの評価の曖昧さを排除し、客観的な評価を行う仕組みです。
学位論文に関しては過去の経験に基づいた評価が可能ですが、新たな取り組みである企画提案形式のQE2 Proposalの評価は難しく、当初は基準がありませんでした。これまで扱ったことがないものだから、評価のしようがなかったのです。まさに、走りながら決めたものの一つですね。
QE2 Proposal GLidD
【Qualifying Examination (QE)】
アメリカの一貫制博士課程においては,研究を主体的に行うために必要な知識や能力を修得しているかを包括的に審査するQEが存在。本プログラムにおいても課程を通じ一貫した学位プログラムを編成する場合、博士課程の前期と後期との接続時や後期修了時において包括的な審査を行う必要があった。
2年目及び5年目にQEを実施。2年修了時に実施されるQE1では、知識・能力に加え世界に貢献するという明確な意志や基礎的素養などを評価。5年目に行われるQE2では、学位申請前に行われ、地球規模課題を解決するのに必要な目利き力、突破力、完結力を評価。
この機会を生かして将来の新たな研究のために
HBPの最終年にはQE2プロポーザルを提出する必要があります。このQE2プロポーザルのテーマは学位論文とは異なるテーマを扱う必要があるため、学位論文作成の忙しい時期においては大変な作業ですが、私はこの機会を生かして将来の新たな研究のために、新しい技術を学び、修得したものをまとめました。この新しい技術とは、私の学位論文の研究に関連するが異なる、より新しい技術に挑戦するプロジェクトワークです。ある研究所のチームとの共同研究において、議論されてきた最新の技術です。このプロジェクトワークを通じて、現在では一般的に活用されていないような最先端の技術を多く学ぶことができました。これは将来の有望な技術であり、私の研究キャリアにおいても身につけておくべきスキルだと考えています。今後予算を獲得することができれば、私の将来の研究テーマになると思います。
QE2プロポーザルは、HBPが有するユニークであり、かつ学位を取得するために必要な審査課程ではありますが、実際にはこの時期、学位論文作成と発表に注力する学生・教員が多いと思います。学位論文と比べると、QE2プロポーザルを重視しない可能性もあり、この点は教員・学生の議論を通じて、今後改善する必要があると思います。
Qualifying Examinationにおける質疑応答
【HBP QE2 Proposal GLidD】
QE2では、目利き力、突破力、完結力を包括的に評価するために、投稿論文数・英語能力やGLidDの到達度に加えて学位論文テーマ以外の研究・事業企画提案書(QE2 Proposal)の審査を導入したが、QE2 Proposalは学内においても初の試みであり、新たな評価方法と基準を設定する必要があった。
GLidDのノウハウである段階的指標とエビデンスに基づく客観的評価をQE2 Proposalの評価に応用。企画提案書に求められる基準を形式知化し、審査・合格基準を明確に設定。