加藤光保先生

GLidDの話を聞いて、「あっ、これだ」と

文部科学省は、博士課程大学院生がなぜ企業に受け入れられないのかということを、社会からの要請という文脈で指摘しています。その内容は例えば、自分の専門のことだけに特化してそれ以外のことへのモチベーションが低いことや、コミュニケーション能力が低い、リーダーシップが不足している、などです。HBPも当初から、社会からの要請を汲んだ人材養成像を掲げており、その中でコミュニケーション能力やリーダーシップ能力の必要性も挙げています。しかし、博士課程教育リーディングプログラム事業における新しい大学院教育において、どのようにしてそれらを身につけさせるのか、また身につけたと言えるのか、当初はイメージが湧きませんでした。その時にGLidDの話を聞いて、「あっ、これだ」と思いましたね。今までの大学院教育は、単位を取る科目学習と研究に基づいた学位論文によって成り立っており、科目学習と研究からなる課程を経て専門性や必要な知識を身につけた学生が学位をとる、という構造でした。この構造では、例えばコミュニケーション能力が身についたのかどうかは、実際のところ判別しづらいところもあります。

専門的な能力にも、Figureを作成することができるようになる、論文を執筆することができるようになる、論文を執筆する際に世界の幅広い分野の研究をしっかりと理解することができる、その分野の専門の研究者たちと適切なディスカッションを行うことができる、といった様々なレベルがあります。コミュニケーション能力が身についたかどうかに関しても同様に、まずはこれができるようになる、次はこれができるようになる、と一歩一歩育てていく必要があると思います。GLidDはこの能力のレベルを可視化することによって、自分がどの段階にいて、次の目標はどこなのか、面談を通じて学生自身が客観的に認識できる仕組みだと、私は捉えています。これは大学院教育の「科目」「研究」に次ぐ第三の柱になると思ったんです。

GLidDによる育成能力の形成的評価レポート

【博士課程教育リーディングプログラム】

科学と技術の発展が社会の進展を牽引する中、知の拡大は専門分野の細分化をもたらし、システムの全体を捉え確かな価値を見出すことが難しくなってきている。こうした中、専門分野の枠を超えて全体を俯瞰し社会的課題の解決を導く高度な人材を育成する必要があった。

俯瞰力と独創力を備え産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを育成するため、文部科学省は産学官の参画を得つつ、専門分野の枠を超えて博士課程前期・後期を一貫した学位プログラムを構築・展開する大学院教育の抜本的改革を支援し、最高学府に相応しい大学院を形成する事業を発足。

陸偉哲

高みを目指せるこの環境こそがHBPの魅力

一般的な大学院では研究が主な活動になりますが、HBPの場合は、研究も含めた様々な活動やプロジェクトの経験を通じて、学内外の多様や人々や文化に触れ、視野を広げることができると、私は感じています。私はこれまでHBPが提供してくれる様々な機会を積極的に活用してきましたし、今後もこのプログラムを活用して、もっとチャレンジして、高みを目指したいと思います。高みを目指せるこの環境こそがHBPの魅力だと思います。

高みを目指すという点で、GLidDはいいサポートだと思います。このプログラムを通じて取り組んできたことをきちんと記録することができること、担当教員やGLidDサポートの方のレビューやフィードバックを通じて自分の経験を整理することができること、あとは過去自分が取り組んだことを思い出すこともできます。GLidDは卒業要件の一つでもあるため、GLidDに示されていることがHBPの学生として求められていることであると捉えています。例えば、インターンシップやラボローテーションに参加するときも、各々の経験を通じてどんな能力を身につけることができるのか、どのような成長につながるのか、自分で整理するためにGLidDを参考にしています。

GLidDに関する卒業必須要件はStep3やStep2と設定されていますが、HBPの掲げる人材養成目標まで自分を持って行くには、最高レベルであるStep4に到達する必要があると思います。しかし、Step4を見るとかなり厳しい要件ですから、例え1つのカテゴリーでもStep4まで達成できれば、HBPの人材要請目標に近づけるのではないかと思います。私は1つでもStep4に到達する人を尊敬しますし、自分自身も頑張って到達したいと思います。

多彩なプログラムコンテンツの積極的な活用

【GLidD(Growth & Learning identification powered by Instructional Design)】

留学、ディスカッション、インターンシップやProject Based Learning (PBL) のような経験型学修プログラムによって修得される学修成果と能力の可視化、および学生が人材養成目標の実現に向けて確かな成長を段階的に実感する仕組みの確立が必要であった。

形式知に基づく人材養成手法を応用した、学修成果エビデンスに基づく段階的指標と、エビデンスに基づく客観的形成的評価を行う筑波大学独自の省察支援システムを開発し、導入。HBPではさらに、定期的な面談を行い学修に関わる学生個別の状況を把握し、包括的な学生支援を実践。