渋谷彰先生

小さな組織であるからこそ

いろいろ大変でしたが走りながら決めていきました。新しいことを始めるというのはそういうことなのです。全部一から決めていかないといけない。HBPの運営委員会が良かったのは、この学位プログラムの中心にいた先生方が参加してくれていたこと、そして前に進めることを前提に議論することができたことです。そして、一年経ってそぐわないところがあればマイナーチェンジをかける、このようなことを何度も繰り返してました。

この決め事に関するスピード感・機動力は、運営委員会の規模に起因しているのかもしれません。それほど大きくない規模の委員会において、参加している教員がみな当事者意識を持っていました。他の研究科における運営委員会の場合、委員会参加者の人数は多いものの、実際には2、3名の委員のみが主に進行を担い、その他の参加者は傍観者になりがちです。それに対して、HBPの場合は核となる10名ほどの教員が意見を出し合い、スピーディーに決めていきます。大きな組織における一人の意見とは異なり、比較的小さな組織であるからこそ、一人の意見の影響力が大きいと思います。

運営委員会メンバーを中心としたHBP教職員と学生

【学位プログラム】

従来の大学・大学院では、学部や研究科等の組織に着目した教育課程の設計が一般的であるのに対し、学位プログラムでは取得させる学位をもとにプログラムを編成するため、既存の教育課程の設置基準とは異なる基準でプログラムを設計する必要があった。

HBPでは、学生に博士号の学位を取得させるに当たり、当該学位のレベルと分野に応じて達成すべき能力を明示し、それを修得させるように体系的に教育プログラムを一から設計。国内外の教員を結集し、産学官の参画を得ながら世界に通用する質の保証された大学院教育を実現。

金保安則先生

伸び率を評価する方法論は

トレイナビリティに関するFD、あのFDはテーマも内容も面白かったですし、勉強になりました。端的に言うと、入試のあり方は、学生の入学後の伸び率を的確に評価できることが非常に重要であるということだと私は理解しました。特にトレイナビリティに関するFDに共感したのは、登壇してくれた講師の方がHBPの学生を一人一人丁寧に分析・評価した上で、学生に学位を与える学位プログラム5年間の第一審査にもあたる、現在のHBPの入試のあり方が、本当に正しいのかどうか、を指摘してくれた点です。

一方で課題も残っています。では、この話を受けて、入試改革や学生の入学に関わる仕組みの改善を行ったかというと、まだノーアクションです。具体的なポイントで話しますと、伸び率が大切だということであれば、この伸び率を評価するにはどうすればいいのか、これがわからないですね。我々教員はその点を評価するのは下手くそだと思います。

ただ、研究室で言えば、2、3ヶ月一緒に研究を行って、その結果と将来展望について議論すれば、その学生が伸びるかどうかはだいたい評価できます。初期に感じたその感覚は、そのあと振り返っても概ね適切であったと思います。ただ、残念ながらこのプロセスには2、3ヶ月という時間がかかります。これは入試ではとりづらいプロセスです。ただ私には、大変重要なミッションの人選に関わる仕事を担っている友人がいますが、その人は人選の基準において伸び率を重視していると聞きました。ということは、伸び率を評価する方法論は必ずあるはずです。我々大学教員も、その人から、伸び率の評価方法を学んで、大学院あるいは大学の入試に応用すべきであると考えています。

既存の入試形態からの脱却と入試改革への挑戦

【HBP入学試験】

5年一貫のプログラムを通じて専門力、目利き力、突破力、完結力を備えた次世代の世界リーダーとなりうる優秀な学生を世界各国から選抜するために、出身国や出身大学による隔たりのない、新たな入試の形式が必要であった。

出願時の書類審査では、GRE、英語力、研究計画書などの提出書類を審査し、入学試験では、筆記試験、口述試験で総合的な人物評価を行い、入学者を選抜。入試会場は筑波大学以外に、ボン(ドイツ)・上海(中国)・ホーチミン市(ベトナム)・ダラス(アメリカ)・台北(台湾)・ジャカルタ(インドネシア)などを予定。