大根田修先生

教職員みんなの心を一つにしたきっかけ

一番印象的だったのは、入試です。特にHBPの入試が全世界公募だという点です。海外にある筑波大学の拠点を中心に、入学する学生を教職員で手分けして応募者に会いに行くため、グループに分かれて様々な地域を訪問しました。私の場合は、大変な旅程でしたね。ヨーロッパの寒い電車に乗って移動したのを覚えています。この最初のドサ回りが教職員みんなの心を一つにしたきっかけになり、自分たちが責任を持ってこのプログラムの立ち上げと運営に取り組んでいかなければならないという、覚悟を生んだのだと思います。教職員ごとに状況は異なりますが、同様の感覚を持っていたと思います。担当教職員が自らの責任をひしひしと感じ変わっていく、私にとってはこの変わる様がとても面白かったですね。

例えば、加藤先生のグループはチュニジアに、私たちのグループはハンガリーに行きました。その時獲得した学生がドーハであり、エスターです。ハンガリーの場合は、まず筑波大学の教員のネットワークを生かして、現地の大学の教員に事前に自分たちの意図を伝えて、学生の募集をかけてもらいました。募集の結果、エントリーしてくれた学生は1名でした。けれども、我々はHBPの入試を実施するためにハンガリーにも立ち寄りました。一般的な筆記試験や面接試験であればメールやスカイプなど、ウェブを介して実施することができますが、HBPの入試はディベート・議論が中心であり、直接会う必要がありました。さらに、ハンガリーではエントリーした学生が1名で、学生同士のディベートが実施できないため、急遽私ともう一人の職員が、その学生とディベートを行い、その内容を他の教員に採点してもらうという形式をとりました。今となってはいい思い出でです。

立ち上げ当時は、興味があり受けてみたいという学生がいれば、1人であっても現地に行って入試を実施する、このような覚悟で学生を集めていました。その覚悟があって立ち上がったプログラムですので、我々にしても思い入れが深く、他の業務も多く取り組む中で非常に印象に残るプログラムです。

ドサ回りを通じて獲得した各国のタレントたち

【海外拠点の開拓】

HBPのカリキュラムは学内で実施される科目を通じた座学のみならず、アントレプレナーシップや適正技術教育、海外企業インターンシップ、海外リサーチローテーションなど海外における実習も含まれるため、筑波大学の海外拠点を中心とした国際ネットワークを構築する必要があった。

筑波大学が有する海外12カ国13拠点に加えて、適正技術教育の実習先である東ティモールやアセアン各国、またインターンシップ先の欧米諸国における企業、組織や団体との連携を通じた国際ネットワークを開拓。学生自らが新たな連携先を開拓することもある。

Eszter Toth

普通、こんなことありえない

当時の私の担当教授が日本でHBPという面白そうなプログラムが立ち上がることを教えてくれて、さらに勧めてくれたのが、ハンガリーにいた私がHBPを知ったきっかけです。私の担当教授は筑波大学の永田先生と長い間共同研究を行っており、とても友好的な関係にありました。その先生の勧めもありHBPのサイトを通じて登録してところ、筑波大学から数名の教職員の方がハンガリーまで来て、プログラムを紹介し、入試を実施してくれました。驚きましたね。遠い国から飛行機に乗って私に直接会いに来てくれたのですから。普通、こんなことありえないと思いました。実際にその時、先生方に会ったのは自分一人だけでした。さらに、その入試で問われた質問の幾つかがとてもユニークでした。受ける前には、専門に関わる難しい問いかけが来るだろうと思っていましたが、全く違っていました。私は学部時代化学を専攻していたため、ヒューマンバイオロジーとは分野が異なり、専門的な質問には答えられないだろうと心配していましたが、実際には全く問題がなく、むしろその問いかけが面白く感じました。確か、「なぜ自然多様性が大切なのか」といったテーマのエッセイを書き、その内容に即した議論を行ったと思います。議論や筆記試験を通して、先生方はおそらく私がどのようなことを考え、あまり詳しくないテーマに対して創造性とロジックを使ってどのように議論を展開するのかを見ていたのだと思います。入試後には先生方と夕食を共にして、とても歓迎されていると感じました。この議論も含めたやりとりがとても楽しく、これが決め手となって、結果日本に行くことを決めました。

イニシエーションセミナーで抱負を語る

【国際性の日常化】

留学生と日本人学生が共に英語で学ぶ環境の整備とともに、異文化・異分野の理解を深める国際性の日常化を実現するために、積極的に世界各国の優秀な学生をHBPに呼び込む必要があった。

優秀な学生を集めるべく、筑波大学の海外拠点を活用し、全世界に向けた学生募集を実施。これまでの在籍生の国籍はアメリカ合衆国、インド、オランダ、韓国、スリランカ、台湾、中国、チュニジア、トルコ、ハンガリー、日本、フィリピン、ベトナム、モロッコなど。