教育・研究体制

教員一覧

学内では医学、生命科学、農学、数理科学(数学、化学、ケミカルバイオロジーなど)、コンピューターサイエンスの各分野から73名、独法研究所と企業から6名、及び他大学教員31名(海外30名)が参加して教員団を形成している。学生の主研究指導教員については、学生に希望調査を行い、本プログラムの研究指導担当教員でかつ学内に常勤する教員の中から決定する。副研究指導教員(国内、国外)の選択については、主指導教員決定後、学生と主指導教員が合議の上で他分野から決定する。原則として、大学と企業あるいは生命、医学、数理、情報の分野を超えて選択することが推奨される。

学内の教員

生化学・分子生物学・細胞生物学

生化学・分子細胞生物学

入江 賢児

細胞に、温度・pHなどの環境変化や栄養源飢餓などのストレスが生じると、それらに対応する細胞応答が起こることで「細胞の恒常性」が維持されます。私たちの研究室では、単細胞真核生物である出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて、「遺伝子発現の転写後制御」と「細胞内シグナル伝達系」の観点から、細胞の恒常性維持の分子メカニズムの研究を行っています。具体的には、(1)酵母と動物細胞におけるRNA結合タンパク質による遺伝子発現の転写後調節機構、(2)RNA局在と局所的翻訳の制御機構、(3)小胞体ストレス応答の制御機構、(4)小胞輸送による前胞子膜形成の分子機構について、研究を行っています。

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生化学・分子生物学

深水 昭吉

生物の「寿命(longevity)」とは何でしょう? 生きる期間は何が決めているのでしょうか? 私たちは寿命を決める遺伝子発現の仕組みを研究し、メチル化(メチル基[-CH3]を転移させる反応)が鍵を握っていることを突き止めてきました。その反応はタンパク質をメチル化するだけでなく、DNAやRNAも標的として寿命調節に関わります。多細胞生物の寿命を理解するため、マウスや線虫の遺伝学・生化学・化学の手法を駆使し、網羅的に遺伝情報を解析しながら標的を絞り込み、分子の実体に迫ります。私たちは寿命の研究を通して、生物がどのように生存していくのかを知り、人間の健康や生活の質の向上にフィードバックできるよう取り組んでいます。研究室では、学生ごとに独立したテーマを決めて、実験の プラン・遂行、学会発表、論文作成も丁寧に指導します。

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生理遺伝学

丹羽 隆介

私たちは、神経とホルモンを介した臓器間の情報連絡システム(臓器連環)の研究を通じて、動物の恒常性や発生過程を制御するメカニズムを理解することを目指しています。主な研究材料はショウジョウバエと寄生バチです。現在、特に注力している研究テーマは以下の6つです。
①幹細胞の増殖と維持の臓器連環
②糖と脂肪の代謝調節の臓器連環
③ステロイドホルモンを介した形態形成と発生タイミングの制御
④寄生蜂と宿主の相互作用
⑤冬季環境で誘導される生殖休眠
⑥安全な殺虫剤創出のためのX線結晶構造解析とケミカルバイオロジー。

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分子発生生物学

小林 麻己人

私たちの研究室では人体のしくみと可能性を知るために、モデル動物としてゼブラフィッシュと超短命アフリカメダカを活用した研究を行っています。動物個体レベルで面白い生命現象を見つけて、そのメカニズムを遺伝学、発生学、分子生物学などの手法を用いて遺伝子レベルで明らかにし、その成果をヒト臨床や産業応用につなげることを目指しています。具体的なテーマは下記です。
1)抗酸化食品及び乳酸菌と健康寿命延伸
2)酸化ストレスや細胞ストレスに対する生体防御機構
3)造血幹細胞や消化器系臓器の発生機構
4)動物行動とエピジェネティクス制御
5)先天性ヒト疾患モデル

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生化学・分子細胞生物学

千葉 智樹

細胞内のタンパク質は時空間特異的な制御を受けて選択的に分解されており、その分解制御が細胞周期、ストレス応答など広範な生命現象において必要です。この選択的タンパク質分解を主に担っているのがユビキチンープロテアソームシステム(UPS)です。私たちの研究室ではUPSがどのように制御されているのかを解明し、様々な生命現象を「タンパク質分解」という側面から捉えようとしています。

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遺伝子制御学

西村 健

細胞の発生・分化のメカニズムを遺伝子発現の観点から明らかにするために、転写因子やクロマチン構造に関する研究を行います。iPS細胞誘導系や脂肪細胞分化系、軟骨細胞誘導系を利用して、エピジェネティックな転写プログラムの調節機構を明らかにし、医学的応用に必要な知識基盤の確立を目指します。また、独自の遺伝子導入系を用いた、再生医療への応用が可能な分化誘導系の構築も進めています。

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解剖学・病理学・実験動物学

解剖学・発生学研究室

高橋 智

・膵臓細胞の発生・分化の分子機構の解明とその応用
・マクロファージの分化・機能発現におけるLarge Maf転写因子群の機能解
・糖転移酵素遺伝子改変マウスを利用した生体における糖鎖機能の解明
・マウスを用いた宇宙環境応答のトランスクリプトーム解析
・オートファジーレセプターp62の分子機能

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実験動物学

杉山 文博

ゲノム編集マウスを使用し、生殖細胞、胚発生、循環器などの 実験動物なくしては解析することが困難な組織や現象の分子メカニズムの解明を目指します。特に、独自に開発したゲノム編集ツールや新たな遺伝子改変システムを用いることで、これまでには解析出来なかったゲノム領域自体の解析や複数遺伝子の代償性などの生命が持つ強健かつ柔軟な恒常性維持機構の本質迫る研究を実施します。学生には独立したテーマが与えられ、そのために必要な遺伝子改変マウス作製をその学生自身が行い、生殖工学や発生工学の基礎的技術を身に着けることができます。

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実験病理学

加藤 光保

がん細胞は、集団として持続的に増殖し続けることが第一の特徴である。私達は、がん細胞集団の中で、腫瘍形成能や再発・転移をもたらす細胞はがん幹細胞だけだという事実と、がん細胞集団の中で、幹細胞の性質が新たに獲得される幹細胞性誘導という現象を独自に発見したことに基づいて、がん幹細胞の可視化による動態解析を行いながら、非幹がん細胞の分裂寿命の決定と幹細胞性誘導過程におけるその解除の機構というがん細胞の特性に関する新たな視点での研究を開始している。

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ウイルス学・細菌学・免疫学

分子ウイルス学

川口 敦史

インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなど、新興ウイルス感染症について研究しています。これらのウイルス感染症は、ヒト以外の動物に由来し、ウイルスが変異を獲得することでヒトへと適応し、パンデミックを引き起こすものです(人獣共通感染症)。我々は、自然宿主からヒトへとウイルスが適応するメカニズムや、過剰な免疫応答により病態が発現するメカニズムを解析しています。また、得られた成果をもとに、抗ウイルス薬の開発も進めています。

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細菌学

森川 一也

感染症を成立させたり、宿主との共生を維持したりするために細菌が持っている生存戦略を明らかにするめのテーマに取り組んでいます。例えば我々はマイナーな亜集団に発現する遺伝子群(esp: expression in minor subpopulation)を見出し、その一部は遺伝子の水平伝達による抗生物質耐性化を担うことを明らかにしましたが、多くのesp遺伝子群の機能は不明でです。これらの機能を明らかにすることで集団不均一性に基づく未知の細菌特性を理解しようとしています。その他核様体や細胞膜の動態や、抗病原性薬の研究もしています。

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免疫学

渋谷 和子

ヒトは病原微生物に対する生体防御機構としてきわめて精緻に統合された免疫システムを築き上げてきました。しかし、感染症は現代にいたってもなお人類にとっての最大の脅威です。一方で、免疫システムの異常は自己免疫病、アレルギーといったきわめて今日的な難治疾患の本質的病因ともなっています。また癌や移植臓器拒絶なども免疫システムに直接関わっている課題です。本研究室では世界に先駆けて、DNAM-1 (CD226), MAIR (CD300), Fcα/μR(CD351), Allergin-1, Clec10aなどの免疫受容体を発見し、これらが炎症性疾患、アレルギー、自己免疫病、がん、感染症などの難治性疾患の発症メカニズムに関与することを明らかにしてきました。我々の目標は、免疫システムの基本原理を明らかにし、これらの難治性疾患に対する革新的な分子標的療法を確立することです。

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応用微生物学

野村 暢彦

微生物細胞の相互作用と多様性・集団性の関係についての理解と応用多様な微生物が集団を形成し、相互作用を及ぼすことで、集団としてのさまざまな機能を発揮することが明らかになりつつあります。このような微生物の集団は、環境中のさまざまな場面で私たちの生活と密接に関与しており、革新的な集団微生物の制御技術の創出が期待されています。 私たちの研究室では、多様な微生物の集団における1細胞の振る舞いや微生物間相互作用の解明に取り組みます。また、微生物の集団とその周りの環境や他の生物との相互作用にも焦点を当てることで、微生物が集団を形成することでどのように環境に適応するかを明らかにし、未解明な点が多い微生物の集団の全貌解明を目指します。

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分子寄生虫学・RNA生化学

ホー キョン

本研究室では、マラリア、アフリア睡眠病などを引き起こす寄生虫の遺伝子発現メカニズムを研究しています。転写中に起きるmRNAキャッピングは寄生虫とヒトとでは異なっているため、キャッピング酵素を標的とした新薬の開発を目指しています。本研究室では mRNAdecapping/recappingの経路を通じて翻訳可能なmRNA遺伝子が制御されているかを明らかにすることである。その他RNA がどのように修復をされているかを調べるためRNAligaseのメカニズムを研究行っています。

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神経科学・生理学

分子神経生物学

桝 正幸

神経回路は膨大な数のニューロンがシナプスを介して結合したネットワークを通じて私たちの知覚、認知、行動などを制御しています。私たちの研究グループは、この複雑なネットワークがどのようにして形成され、神経系として機能を獲得していくのかを、遺伝子や分子のレベルで明らかにする研究を進めています。具体的には、軸索ガイダンス分子や細胞間シグナルの重要なモジュレーターである糖鎖の神経回路構築における役割を、主に遺伝子改変マウスを用いて調べています。分子生物学、生化学、発生工学、神経解剖学、神経行動学など多くの分野の手法や考え方を駆使しながら、神経系の本質に迫る研究を進めています。

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神経生理学

小金澤 禎史

脳による血液循環や呼吸運動の正確な調節は、生体の恒常性維持にとって重要な役割を果たしています。したがって、このシステムが正常に動かない場合には、重大な循環系の疾患を引き起こすことになります。しかしながら、その実態については、未だに多くのブラックボックスが存在しています。当研究室では、そのブラックボックスを明らかにするために、齧歯類のin vivo標本やin situ標本を用いて、主に電気生理学的手法を用いた循環・呼吸調節中枢の詳細な機能解析を行っています。

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発生生物学

小林 悟

生殖細胞形成機構の解明に挑む
生殖細胞は次代に生命をつなげ、体細胞は個体の生命を支えます。このように運命が大きく異なる生殖細胞と体細胞は、受精卵の分裂により生み出された姉妹同士です。では、どのように生殖細胞への運命が決定されるのでしょうか? ショウジョウバエの産卵直後の卵の後端には、「生殖質」と呼ばれる細胞質があり、それを取り込んだ細胞のみが始原生殖細胞(PGC)となり、生殖細胞に分化することができます。さらに、その生殖質を体細胞に取り込ませると、その細胞は生殖細胞になることがわかっていました。このことは、生殖質中には体細胞分化を抑制する分子(母性因子)と、生殖細胞への分化を活性化する母性因子が存在していることを物語っています。私たちは、このような母性因子の同定とともに、PGCの性決定機構の解明に挑んでいます。

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分子細胞神経生物学

鶴田 文憲

私たちのグループは、グリア細胞が神経の発生や分化、神経回路形成に対して、どのように作用しているのか、詳細な分子メカニズム解明を目指しています。また、グリア細胞の異常によって引き起こされる脳神経疾患や脳機能障害も研究しています。現在、細胞外微小核によって制御されるミクログリアの多様性制御、ミクログリア成熟とプリン代謝の関連、神経細胞やアストロサイトの非定型分泌経路、アストロサイトによる低体温制御、さらに神経炎症を引き起こす翻訳後修飾の解析やスクリーニングシステムの開発などに取り組んでいます。これらのプロジェクトを通して、発達期におけるニューロン・グリア相互作用の作動原理を解明し、これまで報告されていない、新しい生命現象を発見したいと考えています。分子生物学、細胞生物学的アプローチから、グリア細胞の新しいメカニズムを解明したいという意欲的な学生を歓迎します。

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血管マトリクス生物学

柳沢 裕美

私たちの研究室では血管生物学とマトリックス生物学を基軸として、発生~恒常性維持~老化における細胞外環境因子(細胞外マトリックスやメカニカルストレス、低酸素など)を同定し、応答する細胞との相互作用を分子レベルで明らかにすることを目指しています。また、さまざまな疾患でどのように細胞外環境が変化し、細胞の挙動や性質に影響を与えるかを解明し、介入ポイントと介入方法を見出し、臨床応用へと繋げます。扱うシステムはマウスですが、心血管・腎臓・皮膚・骨など多様な組織を研究しています。今後は、脳血管と脳の構築に関わる細胞外マトリックスの探索や、血管や皮膚などの組織幹細胞を維持するニッチ因子の同定などを行なっていきたいと考えています。

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認知行動神経科学

松本 正幸

我々の研究室では、注意や記憶、推論、学習、意思決定などの心理現象を実現する脳のメカニズムを解明することを目的としています。そのため、ヒトに近い脳の構造を持つサルに様々な認知行動課題をおこなわせ、その際に脳がどうのように活動するのかを電気生理学的な手法を用いて調べています。また、その活動を薬理学的、光・化学遺伝学的に操作することにより、脳の活動が行動制御に果たす役割を解析しています。特に現在は、その機能異常が精神疾患とも深く関わるモノアミン神経群に着目し、これらの神経群が心理現象に果たす役割を神経回路レベルで研究しています。

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幹細胞・再生医学

再生幹細胞生物学

大根田 修

組織幹細胞の臨床応用に向けた機能解析
私たちの研究室では、治療効果の高い組織幹細胞の臨床応用を目標に再生医学研究を行っています。組織幹細胞は生体内に存在し、再生能力や多様な細胞に分化する能力を有しています。当研究室では主に間葉系幹細胞(MSC)と血管内皮前駆細胞(EPC)を用いて研究を行っています。しかしながら、幹細胞移植の治療効果は、年齢・病状・薬物治療歴等の様々な患者背景に左右されます。よって当研究室では、組織幹細胞のポテンシャルを最大限引き出すことを目的として、患者背景の違いが組織幹細胞に及ぼす影響および加齢による影響について詳細な分子メカニズムの解明を行っています。

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幹細胞治療

山崎 聡

当研究室では、幹細胞生物学の研究とその応用に向けた基礎研究を行なっています。近年、様々な多能性幹細胞や成体幹細胞(組織特異的幹細胞)の存在が明らかとなり幹細胞研究分野が大きく発展しつつあります。しかし、いまだ未開拓なことが多くあるのも幹細胞の醍醐味でもあります。これらの疑問に答えるための分子生物学、発生工学、免疫学、工学、数理科学を融合した解析手法により新しい生物学的概念を提唱しようとしています。

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遺伝医学・インフォマティクス

分子遺伝疫学

土屋 尚之

免疫系において機能する遺伝子群はきわめて多様性に富み、その一部が、疾患に対するかかりやすさ、重症度や薬剤に対する応答性の個人差に関連しています。当研究室では、難治性全身性自己免疫疾患であり、膠原病と総称されている全身性エリテマトーデス、ANCA関連血管炎、全身性強皮症などを主な対象に、ヒトゲノム解析のアプローチから、病因や病態に関連する遺伝的バリアント(遺伝子多型)の探索を行っています。研究成果は、発症機序の解明、創薬の分子標的や臨床現場で有用なバイオマーカーの同定、個別化予防医学などに応用されることが期待されます。

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バイオインフォマティクス

尾崎 遼

生命医学研究においてビッグデータ・情報解析の重要性はかつてないほど増しています。本研究室では、複雑多様な大規模生命データから意味を見出し、解釈する方法論・情報技術を研究しています。大きなテーマは、(1)ゲノム配列の機能の解釈・予測技術の開発、(2)1細胞/空間オミクスデータの解析技術の開発、(3)生命科学研究の自動化(ラボラトリーオートメーション)、(4)医療データ解析、があります。また、バイオインフォマティクス、プログラミング、情報科学、統計科学、応用数学を駆使し、疾患研究などの応用も進めていきます。様々なバックグラウンドの学生が医学・生命科学とインフォマティクスの融合を志せるよう、研究立案から情報解析技術、論文作成まで指導します。

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ゲノム生物学

村谷 匡史

私たちのグループでは、宇宙医学・生物学研究とバイオバンク臨床検体のゲノム・エピゲノム解析を主なテーマとしながら、これらの研究を進める過程で開発された微量検体解析技術とインフォマティクス手法、および運用ノウハウを、様々な共同研究や企業への技術移転など*を通して応用しています。ゲノム医療、ラボドロイドによる実験の自動化、臨床検査・研究への機械学習の導入をはじめ、社会的に必要とされている課題に対応しながら研究分野を定義し、解析手技や科学的な考え方を実戦で磨きたい方にも面白い環境です。

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IT創薬・ケミカルバイオロジー

広川 貴次

タンパク質立体構造解析技術の発展により、構造生物学データを起点とした創薬支援研究が本格的に注目されています。しかし、構造生物学データの中には、特定の条件や環境に依存した構造情報により、そのままのデータでは創薬へ適用が難しいとされています。計算機を活用したインシリコ技術は、このような問題を補完できる技術であり、構造生物データと融合させることで、より高度な創薬支援研究が実現可能となります。研究室では、創薬標的タンパク質を中心に、分子モデリング、分子シミュレーション、ケモインフォマティクス、ケミカルバイオロジーの要素技術に基づいた、実用性の高いインシリコ創薬の支援研究や高度化研究のテーマを学生に設定し、学会発表や論文作成を指導いたします。

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睡眠制御の分子機構

国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)柳沢/船戸研究室

柳沢 正史

私たちは人生のおおよそ三分の一を眠って過ごします。この“眠る” という現象はいまだにきちんとメカニズムや役割を説明できない現象です。また、様々な原因でこの睡眠が乱される=睡眠障害がおこることも現代社会で大きな問題になっています。 覚醒制御を担う生理活性ペプチド“オレキシン” の発見を契機に睡眠研究は飛躍的に理解が進みましたが、なぜ睡眠が必要なのか、近過去の睡眠履歴を参照するホメオスタシス制御のメカニズムなど、睡眠に関する謎はまだ多く残っています。我々は睡眠の本質を探っていくため、表現型から遺伝子道程を目指すフォワードジェネティクスやin vivo imagingなど、最新鋭の機器・手法を取り入れた生化学・生理学的アプローチによる研究を展開しています。

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睡眠・冬眠を制御する神経回路

国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)櫻井(武)/平野研究室

櫻井 武

睡眠と覚醒は、視床下部と脳幹と大脳皮質の機能的なつながりによりコントロールされています。そこには様々な脳内物質が介在しています。私たちはそれらの脳内物質とそれらの受容体の機能や、これらのシステムを結びつける神経回路を解明することにより、睡眠覚醒の制御システムの全貌を明らかにすることを試みています。

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睡眠におけるグリア/神経相互作用/睡眠覚醒の神経回路

国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)ラザルス /大石研究室

ラザルス・ミハエル

当研究室では、脳が睡眠や覚醒意識を調節するための細胞・神経基盤の理解に取り組んでいます。動物の行動や脳波における特定の神経集団の機能を調べるため、神経活動操作(光遺伝学・化学遺伝学・光薬理学)やin vivoイメージング(光ファイバ内視鏡)などを活用しています。また、一細胞遺伝子解析もしくは空間的遺伝子解析により細胞・分子レベルでの睡眠と免疫系のクロストークの理解を試みています。現在までに、なぜコーヒーで目が覚めるのか、なぜ退屈な時に眠くなるのか、どのようにレム睡眠不足がジャンクフードへの欲求を増加させるかなどについて、成果を出してきました。

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睡眠覚醒サイクルを通じた神経活動ダイナミクス

国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)本城研究室

本城 咲季子

睡眠は神経系を持つ生物に普遍的な 生命現象です。睡眠は認知機能、および個体恒常性の維持に必須である事が知られていますが、その分子・細胞レベルでのメカニズムは未だ明らかではありません。私達は、睡眠の機能を理解するために、神経細胞の発火パターンや遺伝子発現状態の睡眠・覚醒を通じた変化を解析しています。モデル生物としてマウスを用い、高次認知機能に重要な大脳皮質・視床に着目しています。学生の一人ひとりにテーマを持ってもらい、論文を読んで研究の背景を理解し、研究計画の立案・遂行を学んでもらいます。

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睡眠中の脳の可塑性とその応用

国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)坂口研究室

坂口 昌徳

脳の成長に伴いその可塑性は組織・細胞からシナプスへと力点が遷移する.一方で海馬の歯状回では例外的にごく僅かのニューロンが成熟後の脳でも新生し続ける.我々は、この新生ニューロンが学習後のレム睡眠時に活動を減少させること、そして驚くべきことにそのごく僅かな活動が記憶の固定化に必要であることを見出した(Kumarら,Neuron, 2020).現在坂口研究室では成体脳が持つ細胞可塑性を基盤とした、記憶回路の再編性のメカニズムを研究している.さらにこれらの研究成果を応用するべく、患者を対象とした特定臨床研究を進めている。

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ヒトの心理・行動における睡眠の役割

国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)阿部研究室

阿部 高志

私たちの研究室では,睡眠がヒトの心理・行動とどのように関わっているのかを理解するとともに,その関係を操作することを目指しています。現在は,聴覚刺激,嗅覚刺激,前庭刺激などの非侵襲的な刺激法によって,ヒトの睡眠中の特定のプロセスを効果的に促進する方法を研究しています。また,簡便かつ正確に睡眠不足に伴うパフォーマンス低下を評価するシステムの開発を目指した研究を行っています。これらの研究によって,睡眠が関わる社会的課題の解決に貢献するとととも,睡眠が心理・行動にどのように関わっているのかを理解することを目指します。

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中枢神経回路の構成と睡眠機能

国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)グリーン/フォクト研究室

フォクト カスパー

私たちの脳はその正常な機能のために毎晩の睡眠を必要としています。実は、寝ている時の脳も活動しており、その活動の仕方が起きている時とは全く違うことが明らかになってきました。私たちの研究室では、それらの異なる脳の活動がどんなメカニズムによって作り出されるのか、そして朝すっきりと目覚めるために何をしているのかについて知りたいのです。私たちは睡眠中および覚醒中のマウスの脳のニューロンの一群、あるいは一つひとつのニューロンからのシグナルを機能的イメージングや電気生理学的な方法を用いてデータを取得します。それらのパターンの違いを検出し、睡眠時と覚醒時においてニューロン同士のコミュニケーションがどのように変化するかを解析しています。それとは別に、私たちはヒトにもマウスにも適用できる新しい脳波解析法も開発しています。この新しい方法により被験者の脳が覚醒しているのか、眠いのか、良い睡眠がとれたのか、それらが定量的に判定できることを目指しています。

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臨床医学

代謝内分泌学・脂質生物学研究室

島野 仁

生命の根源:エネルギー代謝を、特に脂質の量、質、センシングに視点をおいて、細胞や臓器の増殖、分化、ストレス応答、炎症、細胞死、オートファジー、幹細胞機能など、あらゆる生命現象の紐解きに挑んでいます。発生工学動物を駆使して、代謝、内分泌にとどまらず、がん、免疫、炎症、脳神経疾患など様々な疾患病態を、様々な臓器で解析、俯瞰、統合しながら生体としての新しい理念、治療を開発します。また最新鋭の顕微鏡技術やバイオインフォマティクスなどデジタルトランスフォーメーションを活用して、オルガネラの形態と機能を可視化し、生命のありようの実感に迫ります。研究室では、一人一人の学生ごとに独立したテーマを決めて、動物 (in vivo),細胞 (in vitro), in silico 実験を並行して多様な経験をしてもらいます。脂質の多様性から従来の分子生物学セントラルドグマを超えた生命の神秘に触れ、未知の玉葱の皮むきを楽しみましょう。

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脂質制御医学

松坂 賢

脂肪酸はエネルギー源、生体膜の構成成分、シグナル分子としての機能を持ち、あらゆる生命現象に関与します。我々がクローニングした脂肪酸伸長酵素Elovl6の研究から、脂肪酸の質(炭素鎖長や二重結合の数・位置)の違いが、エネルギー代謝をはじめとした様々な細胞機能に重要な役割を担っていることが明らかとなってきました。本研究室では、Elovl6を中心に脂肪酸の質から生活習慣病、神経変性疾患、がん、希少疾患(ライソゾーム病)などの病態を解明し、その制御による疾患の新しい治療法の開発を目指した研究を行います。

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血液内科学

千葉 滋

造血器腫瘍(白血病や悪性リンパ腫など)のゲノム異常の解析や、腫瘍の微小環境の解析を通じ、細胞や分子レベルでの病態の解明に基づく治療法開発を目指しています。シングル・セルRNA解析やそれに伴う高度なバイオインフォマティクスの手法も取り入れています。材料としては、患者から得られる血液、骨髄、生検組織などの生体材料の他、培養細胞や遺伝子改変マウスなどを用い、様々な技術を駆使して研究を行います。学生は個別テーマをもち,原則として筆頭著者としてガイダンスのもとに英語論文を執筆します。

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膠原病リウマチアレルギー内科学

松本 功

膠原病や関節リウマチ、アレルギーなどの自己免疫疾患の診断・治療は劇的な変化を遂げています。しかしながら、根本的な病因論が未だ十分でなく、病態に対しての根治的治療はありません。本研究室では、それらの疾患に対して、我々独自の疾患動物モデル、及びヒト検体を統合的に検証することで、病態論から免疫システム自体を見直す研究を進め、病態本体制御へのアプローチを行っています。また、研究論文抄読会や研究進達meetingにも参加してもらい、免疫学及びそれが関与する疾患群の最新論を討議しています。将来の自己免疫疾患の病態制御及び治癒を可能にする、夢を持った研究者を歓迎いたします。

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数理アルゴリズム・人工知能

情報数理研究室

櫻井 鉄也

人工知能によるデータ解析や数理モデルによるシミュレーションのためのアルゴリズムの研究をしています。特に、病院や研究機関、企業などの分散したデータに対してプライバシーや秘匿情報を保護して解析を行うデータコラボレーション解析技術の開発を行っています。また、ゲノムや遺伝子発現、メタボローム、医療データなどの医療やヘルスケア分野でのデータの解析手法の開発を行っています。

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計算生命科学・理論構造生物学・量子化学

計算生命科学

重田 育照

生命現象はタンパク質、核酸、脂質、糖類などの生体内分子によって駆動される一連の化学反応によって支配されています。そのため、生命現象の根本的分子メカニズムは化学反応に伴う電子状態変化と原子の空間配置を探索することで明らかにできます。計算生命科学研究室では、量子論に基づく第一原理計算や古典(統計)力学に基づく分子動力学計算などの計算科学的手法を駆使して、生体内分子に内在する動的な構造-機能相関を明らかにし、生命現象の本質を捉える研究を行なっています。

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学外教員

氏名 ホームページ 所属部局・職名 現在の専門・学位
永田 毅 みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社情報コミュニケーション部マネージャー
館野 浩章 国立研究開発法人産業技術総合研究所

海外教員

氏名 ホームページ 所属部局・職名 現在の専門・学位
Aristidis Moustakas Uppsala University
Arthur D.Lander University of California Irvine
Bernd Fleischmann ボン大学 Professor and Director,Institute of Physiolology I
Carl-Henrik Heldin ウプサラ大学教授
Hong-Gang Wang Pennsylvania State University College of Medicine
Joseph S.Takahashi UT (University of Texas) Southwestern Medical Center
Seong-Jin Kim Research Institute of GILO Foundation
Lewis L. Lanier カリフォルニア大学サンフランシスコ校教授微生物免疫学部長
Michael Kann ヨーテボリ大学
Peter ten Dijke Leiden University
Tsai-Kun Li National Taiwan University
横森 馨子 University of California Irvine